Tgniy

『Eternal Voice 消え残る想い』感想

Tgniy 2024. 5. 20. 04:23
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作品紹介
ヴィクトリア女王統治下のイギリス。

考古学に傾倒しているユリウスは、古美術商を営む叔父に頼まれ、アンティーク・ハンターとして各地を飛び回る生活を送っていた。

そんなある日、彼はメアリー・スチュアートの遺品とされる首飾りを手に入れる。

叔父は色めき立つが、その日からユリウスは原因不明の目眩や悪夢に悩まされるようになる。

あの首飾りは呪われているのではないか。思いあまったユリウスは超常現象を研究する友人の元を訪れ、助手を務めるアデーラという女性に巡り会う。

アデーラはユリウスを一目見るや、全てを察したかのように彼の状態を言い当てる。

この二人の邂逅はまさに運命的なものであった。

そして二人はやがて巻き起こる国を揺るがしかねない大事件へと誘われてゆく…。

作品紹介 | 月組公演 『Eternal Voice 消え残る想い』『Grande TAKARAZUKA 110!』 | 宝塚歌劇公式ホームページ

作品の背景


16世紀後半、日本では信長、秀吉の時代。

ヨーロッパは宗教改革で揺れていた時代にあたり、

イングランド(イギリス国教会)

VS

スコットランド(プロテスタントの中でも「長老派」)

という対立のベースがありました。

スコットランドの女王であったメアリー自身は、カトリック教徒。

彼女はスコットランドを再びカトリック国家にしようと画策し、議会と対立。

結局王座を追われ、エリザベス1世が治めるイングランドへ亡命。

メアリーは19年間幽閉されたのち、エリザベス暗殺計画に加担したとして処刑されました。


メアリーは愛人と結婚するために夫を爆殺した疑いがあるなど、奔放な女性。

エリザベス1世は国益の為多くの求婚者を拒み、独身を通して「国家と結婚した」女性。

対照的な「ふたりの女王」の人生は、何度も映像化されています

結局、エリザベス1世に跡継ぎがいなかったため、メアリーの息子がイングランド国王となります(現在のイギリス王室のメンバーは、メアリーの子孫にあたる)。

このような経緯のため、ふたりの女王の死後、ふたつの国家は


バチカン派:「カトリック」


反バチカン派:

国王「イギリス国教会」

議会、イングランドの庶民「清教徒」

スコットランドの庶民:「長老派」


が入り乱れて、対立することとなります。


『Eternal Voice 消え残る想い』でえんえんと描写される、「メアリースチュアートの首飾りに込められた消え残る思い」や、「カトリックの議員たちによる王室廃止運動」には、こういった込み入った背景があります。


正直感想


『Eternal Voice 消え残る想い』は、日本史で例えれば

「本能寺異聞」~信長の子孫と光秀の子孫が、信長の無念の声に導かれ、本能寺で運命の出会い、そして本能寺の変の真実に辿り着く!~

みたいな話だと思います。

日本で日本人向けにそういう話を上演するなら、特に説明が無くても、客はまあ歴史的背景は知っているでしょう。

でも、特に日本史に興味が無いイギリス人がいきなり「本能寺異聞」を見て、「うんうん、わかる!」となるか、という問題があります。

個人的に、宝塚歌劇の「大劇場作品」は、地方から「宝塚観劇バスツアー」に参加して観劇に行くような客層にも、「初見で7割くらいは話がわかって楽しめる」ように作劇するべきだと思っています。

確かに「ふたりの女王 エリザベスとメアリー」の話は「西洋の歴史好き」には有名なエピソードですが、

高校の世界史の教科書の本文にはエリザベス1世は掲載されていても、メアリースチュアートのことまでは載っていません。

日本の大劇場でこの話を上演するなら、物語の前半でエリザベス1世とメアリースチュアートの確執について、セリフだけでなく舞台の上で寸劇を演じるくらいはしないと、伝わりにくいのではないでしょうか。


また、作品の舞台となる19世紀後半になると、イングランドやスコットランドにおけるカトリック教徒への弾圧は相当に解消されてきておりました。

当時のイギリスでは、「イギリスの国教をカトリックに変更する」よりも「アイルランド(カトリック教徒多数)の独立運動」のほうが、切実な社会問題だったと思うのです。

アイルランド問題は現代に至るまで続いている課題で、劇を見ている観客は「なるほど、この話に出ているカトリックの議員たちは、アイルランド独立派なのだな」と思う方が多数なのではないでしょうか。

そこにスコットランド女王メアリーの話が出てくるので、余計に話がややこしくなり、ややこしいうえに話の結末がやや肩すかしに終わったなあ、というのが正直な感想です

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